お見立て
舞台は吉原の遊女屋。田舎者の杢兵衛(もくべえ)大尽が登楼し、花魁の喜瀬川を呼ぼうとする。じつは大尽、喜瀬川から「逢いたい」という手紙を貰い、やってきたのだ。ところが、喜瀬川は店の若い者に「あんな田舎者はいやだよ」などと言って逢おうとしない。じつは、金の工面をしようと、杢兵衛大尽に手紙を出したのだが、ほかで算段がついたので逢う必要は無いという。間に入った若い者の喜助は、喜瀬川に入れ知恵されるがままに「花魁はいま体の具合が悪くてお目にかかれません」と断りを言うが、大尽は「それじゃあ見舞いにいくべえ。部屋はどこだ」と言い出す。しかたが無く「入院をしているのです」と言えば「どこの病院だ。そこへ行こう」と食い下がる。嘘はだんだんエスカレートし、ついに喜瀬川は大尽に逢えない悲しさのため、こがれ死にしたということに。どこまで行っても素直な大尽は涙を流し「墓参りに行くべえ」と発案。喜助も引き下がれなくなり、大尽を適当な寺へ案内するが・・・。<br/>
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遊廓での遊びが、現在の目から見て理解しにくいのは、花魁が客のことを「振る」ということがしばしばあったところ。落語の「五人廻し」「明烏」などにも振られた男の描写がある。遊女はなんやかやと理屈をつけて、客の相手をしないことがあり、それに文句を言う客は野暮という不文律があった。この噺に登場する杢兵衛大尽もかわいそうに「振られ組」の一人だ。喜瀬川のキャラクターはともすると嫌な女になりそうだが、雲助の描写は陽性で、さほど悪気のない女に描いている。吉原の東側には山谷という寺町がある。だから、噺の後半、喜助が山谷に足を向け、適当な寺に入ってしまうのはリアリティのある設定。廓噺ではあるが、からっと楽しめる一席。 <br/>
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第四回「浜松町かもめ亭」での録音。
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https://rakugo.ch/play/110
2018-04-08T00:00:00+09:00