夢の酒
梅雨時、ある商家の昼下がりのこと。店の奥でうたた寝をしていた若旦那を、風邪をひくといけないと奥方が揺り起こすと、なにやら夢を見ていた様子。「どんな夢を見ていたの?」と訊ねられた若旦那は、夢の内容を語り出す。用足しに出掛けた向島で急な雨に降り込められ、とある家の軒先で雨宿り。すると、その家の女が出てきて、なかで休息なさいと声を掛けてくれる。誘われるままに家に上がり、いつもは飲めない酒を飲み、さらにはその女といい雰囲気に・・・。ここまで聞くと奥方は嫉妬で悔し泣き。騒がしさにやってきた大旦那も、「夢に悋気」の女心に苦笑する。しかし、奥方はおさまらない。「淡島様に願掛けをすれば同じ夢を見られると申しますから、夢の中でその女を叱ってください」と大旦那に詰め寄る。大旦那は困惑しながらも、しぶしぶ願掛けをして昼寝すると、いつの間にか向島にやってきた様子・・・。<br/>
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八代目桂文楽の十八番である。夢の女を訪問するという洒落たアイデアの一席。柳家小袁治は五代目小さん門下のベテランで近ごろとみに円熟。みずから「梅雨の時期の前後しかこの噺はやらない」と述べているとおり、噺の背景にある「昼の雨」「午睡」「向島」といった噺の風情を大事にし、好もしい雰囲気を醸し出している。亭主の夢に嫉妬する若奥様の造型も可愛く、小品短編小説のような味わい。<br/>
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第16回「浜松町かもめ亭」での録音。
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https://rakugo.ch/play/114
2018-04-08T00:00:00+09:00