笠碁
川柳に「碁敵は憎さも憎しなつかしし」とある。近所に住む近江屋と相模屋の大旦那は囲碁友達。隠居の身分なので、毎日、一緒に碁を打って楽しんでいた。ところが、ある日、近江屋の旦那が知人から「待ったをする碁は上達しない」と言われ、それもそうかと待ったなしの勝負をしようと発案。相模屋の旦那も承知して一戦が始まる。ところが、途中で近江屋の旦那がたった一目の「待った」をしてもらいたくなったから大変。相模屋は「今日ばかりは待てない」と強情を言い、近江屋は「お前さんは薄情だ」と怒り出す。果ては十五年前の金の貸し借りの話までが持ち出され、ついに二人は喧嘩別れしてしまう。それからしばらくたった雨の午後。好敵手を失った二人の隠居は退屈で仕方がない。相模屋は「忘れ物を取りに行く」という口実で近江屋を訪ねようとするが傘がない。仕方がないので富士詣りのときに買った簑笠をつけて外へ出るが・・・。<br/>
2007年7月11日に開催された「第7回 浜松町かもめ亭」での録音。この日の会には歌舞伎俳優の中村福助丈がゲスト出演。マクラで福助丈や歌舞伎の話をしているのはそのためである。「笠碁」は人情味の濃い、落し噺の名作で、近年は馬治の大師匠、十代目・金原亭馬生や五代目・柳家小さんが得意にしていた。前半、いい年をした大旦那二人の喧嘩が描かれる。馬治の口演は、やわらかみのある口調で、孫もいる大人が碁の一目を待った、待たないで熱くなる無邪気さ、子供っぽさを的確に描写。後半は店を訪ねる相模屋の主人と、それを待ちかねている近江屋の主人をカットバックで描き、両者の心の内が手に取るよう。気持ちよく聴ける一席である。
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2018-04-08T00:00:00+09:00