あくび指南
職人の八五郎は下手の横好きで色々な稽古事をかじってばかりいる。あるときは小唄を習っていたが、あまりに下手なためほかの弟子に悪影響があると師匠に嫌がられ、踊りを習えば、おさらいの会で一人だけ左右逆の振りで踊り舞台から落ちてしまう。この八五郎が新たに習おうとしているのが「あくび」。町内に普請があり、様子を見ていると女師匠に「あくびの指南をいたしますのでどうぞおいでください」と誘われる。女師匠と近づきになりたいという下心もあり、友達を誘うとさっそく指南所へ。しかし、女師匠に教えて貰えると思ったのは八五郎の勘違い。先日の女性は挨拶に出てきただけで、あくびの指南をするのは亭主の欠伸斉長息先生。八五郎はがっかりするが、気を取り直してあくびの稽古をはじめる。はじめの稽古は「夏のあくび」。隅田川に浮かぶ船に乗った心持ちで、白扇を煙管に見立て、風流なあくびをする。しかし、初心者の八五郎はなかなかうまく出来ず・・・。<br/>
寄席でもよく出るポピュラーな滑稽噺だが、喜多八の演出にはいくつかの特徴がある。ひとつ目のポイントは、八五郎が女師匠からあくびを習うのだと勘違いして稽古所へ出かけるという展開にある。通常の演出では「あくびを習いたい」というだけで弟子入りということになるのだが、喜多八版では、やもめ男が、下心もあって稽古所へ通うという動機を設定している。二つ目の特徴として、あくび指南の先生が「欠伸斉」と名を名乗り、妙に武張った対応をするのもオリジナルの味。欠伸斉と夫人のコンビネーションもよく効いている。「あくび指南」は師匠である小三治十八番でもあるが、喜多八は独自の演出で工夫し、見事に自分の噺に仕立て直した。マクラでは子供の頃の稽古事を回想。習字、絵画、ピアノ、バイオリンなどを習ったというセレブな思い出から、最後は「本当は宝塚に入りたかったけど」と笑わせる。<br/>
この録音は2008年に開催された第17回「浜松町かもめ亭 古今亭寿輔・柳家喜多八二人会」でのテイク。
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https://rakugo.ch/play/118
2018-04-08T00:00:00+09:00