いかけ屋
「鋳掛け(いかけ)」とは、穴の空いた鍋や釜などを錫や鉛の合金を用いて修繕すること。それを商売にしているのが「鋳掛屋(いかけや)」である。路上に道具を広げ、商売をしている鋳掛屋を見つけた近所の悪ガキたち。よい遊び相手が出来たと群れをなして言いたい放題。「ご精が出ますなぁ。一生懸命稼ぎ給え」「金を溶かすとは偽金造りか」「君に細君はあるかね?」などと、ませたことを言う。 鋳掛屋に怒鳴られると、今度は近所の鰻屋の店先に移動し、鰻の腹の中から出てくる釣り針を貰おうとするが・・・。
ひと昔前までは水漏れのする鍋や釜を直して使うのが当たり前だった。そのため、路上で火をおこし、鋳掛けをする光景を町角でよく見ることが出来た。落語の「いかけ屋」は、そうした近過去の風景を題材にしている。上方落語に継承されてきた演目を落語芸術協会の桂小南が持ちネタにし、寄席でよく演じた。喜多八の「いかけ屋」は小南から稽古を受けたうえで、東京弁に仕立て直したものである。<br/>
スケッチ風の噺なのでどこで切ってもよく、演者によっては鰻屋の件まで行かず、鋳掛屋だけで終わりにしている。今回のテイクは、本編に負けず劣らずマクラが楽しい。喜多八が子供の頃に体験したさまざまな光景が回想され、ガキ大将同士の喧嘩、棒っきれを振り回しての遊びなどが生き生きと語られる。また、昔のオモチャである「針金細工」「樟脳舟」「はばたき飛行機」の記憶も面白い。そこから、住宅地にやってきたさまざまな商人の回想になり、鋳掛屋につなぐ。昭和の時代を記録した随談として出色。当テイクは2009年2月18日に開催された「浜松町かもめ亭 喜多八・白酒二人会」での録音。開口一番、前の高座を受けた発言をしているが、前にあがったのは桃月庵白酒で出し物は「明烏」。
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2018-04-08T00:00:00+09:00