やかんなめ
江戸時代、いまほど医学が発達していなかった時代には、いろいろな民間療法があった。女性に多かった「癪(しゃく)」の病の合い薬(治療法)と言われていたのが男のまむし指。男性の太い指で苦しいところをぐっと押すと、発作がおさまると言うのだ。ある春先の昼下がり、御大家の奥方が、供の女中たちを連れ、向島へと梅見にやってきた。そこへ草むらのかげから出てきた一匹の蛇。奥方は蛇にびっくり、癪の発作を起こして、そこへ倒れ込んでしまう。しかも、しまつの悪いことに、この奥方の癪の合い薬は、「赤銅の薬缶」。薬缶をなめると痛みが治まるという不思議な癪なのだ。女中たちが右往左往しているところに、六十がらみの侍が、従者と一緒に歩いてくる。見ればこのお侍、頭に一本の毛も無いつるっ禿。女中たちは、お侍の頭が薬缶の代わりにならないものかと相談し・・・。<br/>
「癪」を広辞苑でひくと、「種々の病気によって胸部・腹部に起こる激痛の通俗的総称。さしこみ」とある。江戸時代は癪の発作を起こす女性が多かったらしく、歌舞伎や浄瑠璃にもしばしば出てくる。この奥方の場合「まむし指」では治らず、「薬缶をなめる」ことで発作が治まるというのだから突飛で面白い。出てくるのが大人の男女ばかりで、喜多八の口演はユーモラスなやりとりのなかにも、濃厚な色気を感じさせてくれる。医学の発達をサカナにしたマクラも面白い。「第一回 浜松町かもめ亭」での録音。
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2018-04-08T00:00:00+09:00