片棒
日本橋石町(こくちょう)三丁目に大きな店を構える赤螺屋吝兵衛(あかにしや・けちべえ)さんは、苦労人だけあってだいの倹約家。三人の息子がいるが、誰に家督を譲ればよいか、頭を悩ませている。番頭に相談をすると「お金の使い方をみれば、誰が向いているか判る」と言われ、「もし、自分が死んだらどんな葬式を出すか」という質問を三人の息子に試してみることにする。まず現れたのは長男の金之助。放蕩家の金之助は「通夜は二晩にわたって出す。続く本葬は本願寺か増上寺を借りて盛大に。棺桶は総白檀でしつらえ、葬列者には一流の料理人がこしらえたお食事を食べていただきましょう。お土産は三段重ねの重箱。それを丹後縮緬の風呂敷で包みます」などと言って吝兵衛さんを呆れさせる。続いて現れたのは次男の銀次郎。破天荒なことが好きな銀次郎は長男の案を鼻で笑い、自分のプランを披露。「しめっぽいのは嫌だから、葬式は紅白の幕を張り巡らす。頭連中の木遣りに乗せて棺桶の入場。そのあとに、新橋、芳町、柳橋の一流の芸者が手古舞姿で続く。さらに山車をしつらえ、その上に、生前の親父をモデルにしたからくり人形を飾る。祭り囃子に乗せて進む山車がにぎやかに・・・」。長男に輪をかけて金を使おうとする次男に吝兵衛さんはおかんむり。そこへ現れたのは三男の鉄三郎。三男は「兄貴たちの案はお金を使いすぎます」と言う。ようやくまともなやつが現れたかと喜ぶ吝兵衛さん。しかし、三男が披露した葬儀の案は・・・。<br/>
金銭感覚にしっかりした創業者と、無駄遣いをする子供たち。いつの世にも見られる図式を短い時間に凝縮した佳品である。葬儀の案は落語家によっていろいろなバリエーションがある。喜多八は、長男がストレートな放蕩家、次男は人とは違うことをしたい目立ちたがり屋、とキャラクターを巧く描き分け、笑わせる。お祭りの様子やお葬式の風俗もたっぷりと描かれ、笑いの中にも庶民の暮らしがわかる一席。第六回『浜松町かもめ亭』での録音。<br/>
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https://rakugo.ch/play/123
2018-04-08T00:00:00+09:00