うどんや
江戸の夜、市中を流して歩いていたのが「うどんや」さん。大勢の客に当たる晩もあれば、ちっともお客が寄りつかない晩もある。この夜、うどんやを呼び止めたのはしたたかに酔った男。唐突に「仕立屋の太兵衛を知っているか?」と言い出し、うどんやが知らないと答えると、問わず語りに昼間の出来事を話し出す。友達の太兵衛のひとり娘、みい坊が祝言を挙げた。あんなに小さかったみい坊が花嫁衣装に身を包み、立派な挨拶をしたので感無量であったとひとりごちる。うどんやが相づちを打つのをいいことに、酔客は同じ話を繰り返すと、水だけ飲んでどこかに行ってしまう。ただで相手をさせられたうどんや、気を取り直して再び町を流すと、今度は家の中から声が掛かるが・・・。
喬太郎も枕で触れている通り、五代目柳家小さんの十八番だった。サゲのある滑稽噺だが、客が酔いにまかせて語る「みい坊」の嫁入りの話には情感があふれ、小道具の「桜湯」なども含めてあたたかい雰囲気が大事な噺。全編を通して、江戸の夜の静寂、寒さが大事な噺でもあり、喬太郎の口演は声のトーンを調節しながら、夜の深さをよく出している。後半、鍋焼きうどんを食べるシーンがある。有名な「時そば」にはそばを食べる場面があるが、比較をすると鍋焼きうどんのほうが熱さやボリューム感が濃厚に表現される。枕の中で、喬太郎が林家正蔵の噺をしたあとに客席がわっと沸く。これは正蔵本人が高座袖に顔を出したためである。<br/>
2008年12月31日開催「浜松町かもめ亭 大晦日スペシャル公演」での録音。
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https://rakugo.ch/play/129
2018-04-13T00:00:00+09:00