竹の水仙
舞台は東海道、鳴海の宿場町(現在の名古屋市)の、いまにもつぶれそうな旅籠「大松屋」。この旅籠の二階に長逗留し、毎日、大酒を飲んではごろごろしている客がいる。旅籠の亭主は、女房に脅かされ、ここまでの勘定を清算してもらうよう、客人にお願いする。亭主のはなしを聞いた客人は泰然として「金なら無い」。びっくりする亭主。しかし、無いものはないので、客になにか仕事をさせて、宿賃の代わりにすることに。聞けば、男の職業は彫り物専門の大工。やがて客人は裏の竹藪から切り出してきた竹を部屋にこもって細工しはじめる。出来上がったのは、先が団子のように膨らんだ奇妙な竹細工。首をかしげる亭主に男は「一輪挿しに水を張り、その中に、この竹細工をさしなさい。そしてそれを往来に飾っておくと、必ず買い手が付く。町人なら五十両、武家なら百両、それ以下にはびた一文負けてはならん」と言う・・・。<br/>
2007年7月11日に開催された『第7回 浜松町かもめ亭』での録音。トリの一席がこの「竹の水仙」で、その前に、歌舞伎俳優、中村福助と喬太郎さんの対談、福助丈の落語「厩火事」が口演されるというプログラムだった。マクラでは、今回の特別公演に関する感想を語っている。噺は数多い「左甚五郎」もののひとつで、甚五郎が京から江戸へ下る途中に見せた秘技のエピソード。喬太郎は、甚五郎よりもむしろ気弱な宿屋の亭主にスポットをあて、言いたいことも言えない亭主が、次第に成長し、本音を語れる人間に成長するさまを描いている。また、意識して現代語のギャグをはさみ、登場人物が「古典だ。ガマンをしろ」など突っ込むのもおかしい。新しい感覚の古典作品になっている。
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2018-04-13T00:00:00+09:00