転宅
大川端にもほど近い粋な町、浜町。夜ふけになり、泥棒が留守だと思いこみ忍び込んだのはお妾さんが暮らす一軒家。食卓のお膳に酒、肴が残っているのを発見し、盗みそっちのけで飲み食いをしているところを家の主、お菊に発見され飛び上がる。あわてて「金を出せ」と脅しに掛かった泥棒先生だが、お菊は鼻で笑い「わたしゃ、おまえさんの同業者だよ」と軽くいなす。聞けば、お菊の本業は泥棒だが、いまは金持ち旦那の妾の身の上。しかし、旦那とは別れ話が持ち上がり、明日からはどうなるかわからないという。さらに「あたしのような女だけど、お前さんのような男と所帯が持ってみたいものだよ。1年でいい、あんたのお神さんにしてくれないかねぇ」と泥棒先生を口説き出すお菊。話を聞いた泥棒は・・・。<br/>
泥棒の一枚上手を行くお妾さんの色仕掛け、というちょっと色っぽい噺である。喬太郎の演じるお菊は、年増女の色気と可愛さがたっぷりで、「あたしも泥棒だよ」とドスを効かせたと思えば、泥棒に一緒になってくれと頼み、ふと「あ、夢見ちゃった」などと恥ずかしそうにはにかむあたりの緩急がみごと。対する泥棒は、盗みを忘れて膳の物を飲み食いするシーンに人の良さが横溢し、さらにお菊に見つかり、急に芝居がかるところなども憎めない。泥棒かつ善人、というまことに落語らしい人物造型になっている。前半の夜の会話から一転、白昼の結末にいたるコントラストも効果的。笑いにまぶしながら、つかの間に見た夢のはかなさまでもが表現されている。<br/>
第13回「浜松町かもめ亭 一周年記念会」での録音。
https://content-public.rakugo.ch/images/episode/spot_image/000/000/000/134/134_episode.main_image_large.jpg
https://rakugo.ch/play/134
2018-04-13T00:00:00+09:00