明烏
日向屋の若旦那、時次郎は二十歳になろうというのに堅物すぎて親が心配をしている。ある日のこと、町内の遊び人、源兵衛と太助の二人が「浅草の観音様の裏手にある霊験あらたかなお稲荷さんに行こう」と誘う。じつは日向屋の大旦那が、我が子に少しは遊びを教えてくれとこの二人に頼んでおいたのだ。出掛ける先は吉原なのだが、若旦那だけは本当に「お稲荷様」と思い込み、日本堤を北上して吉原大門をくぐる。遊び人二人は、ひやかしの客を「参詣人」、遊廓の女中達を「お巫女さん」などと言って若旦那を登楼させる。座敷にあがってからようやっとここが吉原だと気付いた時次郎、あわてて帰ると言い出すが、二人は「吉原に足を踏み込んだら、一人勝手には帰れない法がある」と作り話で若旦那を引き留める。やがて夜が更け・・・。<br/>
新内や歌舞伎には遊女・浦里と若旦那・時次郎のカップルを主人公にした「浦里・時次郎物」の系譜があるが、この作品もそのひとつ。ただし落語のストーリーは先行作品とはほとんど関係なく、一席の落し噺になっている。柳家小満んのはじめの師匠は八代目・桂文楽。この「明烏」が代表作の一つで、生涯に繰り返し演じた。門人の小満んは、文楽型をベースに、吉原の情景を子細に増補。さらに、通常は割愛される浦里・時次郎の「床入り」シーンも聴かせるサービスぶりである。若旦那がはじめて女性を知るという艶めかしい噺なのだが、小満んはさらりと運び、上品な仕上がり。若旦那が怒り始める場面も、周囲の人間がうまくかわし、シリアスに傾かない。大人の味わいの一席である。
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2018-04-13T00:00:00+09:00