目黒のさんま
ある秋の日。さる殿様が家来を連れ、目黒の里まで遠乗りに出掛けた。馬に乗り、また現地では家来と野原を駆け回ったりしたためすっかり空腹になった殿様。家来に「弁当を持て」と命じる。しかし、急な思いつきの遠乗りであったため食事の用意がない。家来が困っていると、近くの一軒家からいいにおいがしてくる。百姓家で、さんまを焼いていたのだ。殿様が所望したこともあり、家来は百姓家からさんま十匹を買い上げると、殿様に差し上げる。当時のさんまは下魚とされ、殿様や大名の食べるものではなかった。はじめて目にするさんまにびっくりしながらも箸を付ける殿様。一口食べると、あまりの美味さに仰天。あっという間にすべてのさんまを食べ尽くすと・・・。<br/>
もっとも知られた落語のひとつである。目黒(江戸時代は郊外)を舞台にしたのんびりした雰囲気が横溢し、昔話的な味わいもある。噺の導入部でも語られているが、当時の殿様の食卓にあがる魚は冷たくなった「鯛の塩焼」ばかりで、立派ではあるが代わり映えがしない。それにくらべ、七輪で焼かれるさんまのじつに旨そうなこと。両者の対比から、人間にとっての豊かな生活が何かと言うことが自然にうかびあがってくる。談修は歯切れ良く噺を運び、ときに現代語を織り交ぜながらも大名物の格調を保っている。マクラで披露される大名小咄も面白い。第9回「浜松町かもめ亭」での録音。
https://content-public.rakugo.ch/images/episode/spot_image/000/000/000/140/140_episode.main_image_large.jpg
https://rakugo.ch/play/140
2018-04-09T00:00:00+09:00