風呂敷
「お兄さん、助けてちょうだい」と熊公の女房が、世話になっている兄貴分のところへ駆け込んでくるのが噺の幕開き。兄貴分が訳を聞くと、女房が事の次第をまくし立てる。職人の熊は「今日は帰りが遅くなる」と外出をしたのだが、亭主の留守に長屋の前を通りかかったのが友達の新さん。何の気なしに長屋へ上げ、茶飲み話をしているところへにわかの雨。女房が雨戸を閉めたところに折悪しく亭主の熊が予想外に早く帰宅した。熊は男ながら大の焼き餅焼き。新さんとの仲を疑うに決まっている。下手に顔を合わせたら大変なことになるので、とりあえず新さんを押し入れに隠したが、今度は熊が押し入れの前に陣取り、なかなか寝ない。このままではいつ新さんのことがバレるかもしれないと兄貴分に相談に来たというのだ。顛末を聴いた兄貴分は一思案。やがて一枚の風呂敷を手にすると・・・。
この噺、昔の演出はもっときわどく、亭主の留守中に、女房と新さんは本当に浮気をしているという設定だったという。それがいつしか現行の形に改訂されたわけだが、遊雀は亭主の留守中に若い男との茶飲み話を楽しむ女房の色気、間接的に表現される新さんの優男ぶりをよく表現し、艶笑がかった味をよく出している。よく知られた箴言「女三界に家無し」「瓜田に靴を履かず」「梨下に冠を正さず」を「女三階に家無し」「おでんに靴を履かず」「じかに冠をかぶらず」などと間違って言うのは古今亭志ん生が得意にしたギャグ。遊雀は、学はないが頼りになる兄貴分の人間像をしっかりと描き、このギャグもよく自分のものにしている。この落語は2008年2月に開催された第14回「浜松町かもめ亭」での録音。噺の中で、「おれたちは霊岸島のおじさんのところで結ばれた。嵐の晩だった」と言うくだりがあり、観客が大笑いしているが、これは先にあがった橘家圓十郎の「お花半七」を踏まえたギャグ。前の高座をサカナにしているのである。そのライブ感もノーカットでお楽しみいただきたい。<hr>第14回「浜松町かもめ亭」での録音/文化放送メディアプラスホール/2008年2月28日(木)
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2018-05-02T12:00:00+09:00