野ざらし
八五郎が長屋の隣人、尾形清十郎のところへ飛び込むのが噺の幕開き。日ごろ「婦人は好まぬ」などと堅物ぶっている清十郎先生の住まいへ、昨晩は妙齢のご婦人が訪ねてきた。八五郎は長屋の壁に穴を空け、二人のいちゃつき一部始終を覗き見したという。「ありゃ一体なんですか!?」と詰め寄る八五郎。しかし清十郎は「あれはこの世の者ではない」と不思議なことを言う。昼間、向島へ釣りに出かけた清十郎は河原で野ざらしになった人骨を発見。哀れに思い、ふくべの酒をかけ、手向けの句を詠んで帰ってきた。夜になると長屋を訪ねてきたのが美しい女性。実は彼女は幽霊で、昼間、回向をして貰った礼を言いにきたのであった。意外な真相を聞いた八五郎、自分も釣りに行けば美しい幽霊といい仲になれるかと思いこみ、清十郎の釣り竿を勝手に借りて向島へ。釣り人でにぎわう土手に割って入り「骨を釣ろう」と竿を振り回すが・・・。
たいへんに古い噺で、原話は中国の「笑府」という書物のなかの笑い話。その話は、中国の玄宗皇帝が亡き妻、楊貴妃の魂魄をさがし求めたという伝説をもじったものだから、ルーツは八世紀にまでたどりつく。もともと仏教説話的な要素が強い古い噺だったが、明治時代の初代・三遊亭圓遊が笑いだくさんに改作し、今日の形にしたと伝わる。遊雀の口演は、ごくさっぱりとして聴きやすい。八五郎がときに狂気の片鱗を見せ、高い声から一転、低い声で釣り人を脅かしたりするくすぐりも好調。この噺、現在は向島の釣りのシーンで終わらせる演者が多いが、遊雀はその晩の顛末まで描く完演版。サゲがちょっとわかりにくいが「太鼓」と「幇間=たいこもち」を引っかけた言葉遊びである。<hr>第三回『浜松町かもめ亭』での録音/文化放送メディアプラスホール/2007年3月16日(金)
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2018-05-02T12:00:00+09:00