子別れ・下 (子は鎹)
大工の熊五郎は腕の良い職人だが、酒にだらしがないのが玉にキズ。あるとき、弔いの帰りに大酒を飲み、吉原に居続けをしてしまう。それがきっかけで女房のおみつと不和になり、ついに離縁。おみつは一人息子の亀を引き取り、長屋から出て行く。後添えに吉原の馴染みの女郎を身請けして嫁にしたが、これが家事一切をせず、金を使うだけの女だった。暮らしがうまくいくはずもなく、女は新しい男をつくって家出。熊は独り身になる。それから三年。好きな酒を断ち、仕事に精を出した熊五郎は立派な職人になっていた。ある日、材木を見るために木場へ向かう途中で、熊は成長した亀にばったりと出会う。かつての女房が針仕事の内職をしながら、息子を小学校に通わせていることを知った熊は、「母ちゃんには内緒だぞ」と亀に小遣いをやり、明日また会うことを約束してその場をあとにする。ところが、家に帰った亀は、母親に小遣いを見つけられてしまい・・・。
よく知られた人情噺。全段は三つに分かれ、熊が酒に呑まれ、女房と離縁するまでを「上」、遊女上がりの女房との暮らしが破綻するまでを「中」、三年後の夫婦再開を描いた大詰めを「下」と呼んでいる。今回、歌之介が演じているのは「下」の部分で、笑わせて泣かせる、全段の中でもっとも口演頻度の高いパートである。歌之介の口演は余分な装飾がなく、大工のストレートな心情吐露、おみつが亀を叱責する気迫など、直線的な表現が心をゆさぶる。息子の亀の造型も楽しい。両親の馴れ初めを楽しそうに再現したり、鰻屋での再会を仲人気取りで運ぼうとするなど、たくましく生きている魅力的な子供になっている。サゲに出てくる「鎹」とは「建材の合せ目をつなぎとめるために打ち込む大釘」のこと。玄翁は釘を打つのに用いる鉄製の槌のことである。(歌之介は主人公の大工に名前を与えていないが、通常、大工の名前は熊五郎なので、「あらすじ」にはその名を記した)。
第30回「浜松町かもめ亭」での録音。
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https://rakugo.ch/play/195
2018-06-20T12:00:00+09:00