佐野山
出演者:春風亭百栄(収録当時は春風亭栄助)
江戸は寛政年間のこと。相撲取りの佐野山は小兵ながらも西の十両筆頭まで昇進。しかし、小柄で見栄えがしないので、よいタニマチ(贔屓)が付かず蓄えがない。おまけに母親が病気になったので、その薬代を捻出するために自分の食事も切り詰めている。そのせいで体はふらふら。これでは相撲に勝てるわけがない。佐野山の窮状を耳にしたのが名横綱・谷風梶之助。千秋楽の前の日に年寄衆を集めると「千秋楽は佐野山と取らせてくれ」と申し出る。横綱の願いとあって年寄衆も承知。東に谷風、西に佐野山という前代未聞の取り組みが発表されたため、江戸っ子たちは大騒ぎ・・・。
寛政年間(江戸後期、1789年~1801年)に活躍した名力士、谷風梶之助、雷電為右衛門、小野川喜三郎などの逸話を虚実おりませて噺に仕立た「寛政力士伝」の一話。もとは講談であったが落語に移植された。主人公の佐野山と名横綱・谷風はともに実在した力士だが、現実には両者の取り組みは無かったので、噺の内容はフィクションに違いないが、いかにも良くできている。谷風の思惑を観客にどこで知らせるかは演者次第だが、百栄は先に「生涯一度の八百長」と断ってからはじめている。特筆すべきが谷風の大きさ。横綱であると同時に人格者でもあるという人物像が魅力的。町の相撲ファンの無責任さ、対する佐野山の人の良さもよく表現され、ほのぼのとする。
収録時期は2008年の1月。この年の秋に百栄は真打昇進。当時は二つ目で春風亭栄助という名前であった。二つ目時代の貴重な録音である。
「第13回 浜松町かもめ亭」での録音。
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https://rakugo.ch/play/205
2018-07-18T12:00:00+09:00