おつとめ
ひまを持て余した町内の若い衆が寄り集まっている。なかのひとりが今晩「百物語」をやろうじゃないかと提案する。蕎麦屋の二階を会場に、蝋燭を灯して車座になり、一人一人、怖い噺を披露するのだ。暑気払いにもなるし、よい退屈しのぎになる。出来の良い噺をした人には酒をご馳走するというのはどうだろう。みなが賛成するなか、熊だけは怖い噺の持ちネタがなく頭を抱える。思案したすえ、知り合いのお寺を訪問し、和尚に「何か怪談はありませんか」と所望する。和尚はしばし考えたのち、修行として托鉢の旅をしていた若き日の話しをはじめる。それはおそろしく山深いところにある、尼寺での出来事だった・・・。
口演頻度の低い珍品である。近年では四代目橘家文蔵、桂藤兵衛の持ちネタであり、百栄には藤兵衛経由で継承された。別題を「尼寺の怪」とも言う。落語にはよくある「怪談噺風の滑稽噺」であり、和尚が教えてくれた尼寺の怪異を熊が蕎麦屋の二階で語るが、覚え違いで滑稽な噺になってしまう。百栄の口演は、前半の和尚とのやりとりに良い味がある。和尚の語る若き日の逸話には本当とも嘘とも判別できない雰囲気があり、仏様(死者)がおつとめ(読経)をしていたという結末にも余韻がある。ひまを持て余した若者の会話、和尚の語る怪談、夜の百物語と舞台が変わる構成も面白く、掘り出し物の逸品。
第35回「浜松町かもめ亭」での録音。
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https://rakugo.ch/play/208
2018-07-18T12:00:00+09:00