質屋蔵
町内の質屋、伊勢屋の三番蔵に幽霊が出るとの噂がたった。
そんな噂が立っては商売に差し障りが出ると、主人は番頭を呼んで「なにが出るのか見届けろ」と言いつける。
臆病者の番頭は、幽霊を見届けるくらいなら暇を頂くと言い出すので、
主人は出入りの職人、熊も一緒ならいいだろうと説得する。
店からの使いにあわててやってきた熊は粗忽者。
聞かれてもいない悪事を次々に白状し、主人に平身低頭する。
主人は熊を笑って許し、三番蔵の怪異を見届けてくれるよう頼む。
日ごろ強がっている熊も実は臆病者。
番頭と二人で震えながら蔵に入ると酒で怖さをまぎらわしながら夜ふけを待つ。
深夜、蔵の中で怪しい物音がしはじめる。中を見ると・・・。
怪談風の枠組みを持っているが、最後まで聴けばサゲもあり、
見事に「落語」になっている一席である。三番蔵の怪異とは何か?が謎の中心ではあるが、
主人が質物には人間の思いや怨みが籠もっているとして語る「おかみさんが苦心惨憺して二分の帯を買う」エピソードや、
出入りの熊が酒や沢庵、下駄までを伊勢屋から泥棒していた話など、面白いエピソードが詰まっていて飽きさせない。
正雀の口演は折り目正しく主人の品格を出し、また各々のエピソードでは充分なおかしみを表現している。
サゲ近くには芝居掛かりになる部分があり、ここは下座入りで堂々たる演出。怖く、楽しく聴ける一席である。
第8回「浜松町かもめ亭」での録音。
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https://rakugo.ch/play/235
2018-09-05T12:00:00+09:00