累草紙 親不知の場
堀越与右衛門は武家の次男として生まれたため、家督を継ぐことが出来ず、
十二歳のときに越中麻和田村に養子に出された。
それから十年がたち、立派に成人したが、江戸に帰りたいという思いが募り
ついに置き手紙をして家を出奔。ひとり江戸へ向かう。
旅の途中、歌の宿という宿場の菊屋という旅篭に泊まった与右衛門は、
階下の座敷から聞こえてくる唄声に耳を奪われる。声音は美しく、三味線の演奏も素晴らしい。
すっかり聞き惚れた与右衛門は女中に唄の主を訪ねと、女の名前はいそと言い、
この家の十九になる娘であるという。与右衛門はいそを座敷に呼ぶことを所望するが、
「いそさんは誰の座敷にも出たことがない」女中に断られる。
諦めきれない与右衛門は、夜ふけにいその部屋に忍び入り、思いを遂げる。
夫婦約束をした二人は夜が明けると一緒に江戸を目指そうとするが・・・。
幕末に活躍した二代目・三遊亭圓生の作になると言われる長編怪談噺の一節。
与右衛門という侍が関係した女を殺害し、その祟りが累々と続いていくという
「累」伝説のバリエーションのひとつであり、圓朝作「真景累ヶ淵」の先行作であるところから
「古累(ふるかさね)」とも呼ばれる。近年は八代目・林家正蔵(彦六)が口演し、
その門人である林家正雀が今日に継承。圓朝物の怪談にくらべ、上演頻度が低く、貴重な録音である。
与右衛門はいそと夫婦約束をするが、心変わりをして親不知の峠で彼女を殺害する。
離縁を切り出す件から、殺害、そして切れ場の怪異までが芝居掛かりで演じられ、三味線やツケも入る。
芝居噺に造詣の深い正雀ならではのこなれた口演であり、
江戸時代の絵草子を読むような、古風な雰囲気をよく醸し出している。
第8回「浜松町かもめ亭」での録音。
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https://rakugo.ch/play/236
2018-09-05T12:00:00+09:00