金明竹
舞台はとある骨董屋。店番をしている与太郎は少々おつむが弱く、猫の爪をとったり、赤ん坊にかかとの皮を食べさせたりと遊んでばかり。今日も見ず知らずの人に蛇の目の良い傘を貸してしまったので、主人は傘のことわりの口上を教える。ところが、与太郎は鼠退治のため猫を借りに来た人に「骨は骨、皮は皮でばらばらになってしまった」と傘用の口上を言ったため、客人は仰天。あわててかえっていく。あきれた主人は、猫の断りの口上を教えるが、今度は主人と面談をしにきた客人に「主人はさかりがついておまけにたれ流し」などと猫用の口上そのままを言ってしまう。それを知った主人はあわてて客人の元へと出掛けていく。店にいるのは与太郎とおかみさんだけ。そこへ、東北弁の商人がやってくる。言葉の様子では、取引先の商人らしいのだが、訛りと早口のため二人はほとんど聞き取ることが出来ず・・・。<br>
<br>
立川談笑版の「金明竹」である。通常の型では、訪問してくる商人は関西人で、江戸言葉と上方言葉のすれ違いが笑いを生むが、談笑版では東北弁(青森弁)に改作されており、立て板に水の東北弁が見事。元の「金明竹」を知っていると、東北弁への置き換えが、さらに楽しめるだろう。前半の亭主と与太郎のやりとりは古典のすじそのままだが、与太郎の確信犯的な「失敗」がほかの演者にない味で面白い。ちなみに商人が言い立てる道具七品「祐乗、光乗、宗乗三作の三所物」「備前長船の則光」「四分一ごしらえ横谷宗岷小柄付きの脇差」「のんこの茶碗」「黄檗山金明竹ずんどうの花いけ」「風羅坊正筆の掛け物」「沢庵、木庵、隠元禅師はりまぜの小屏風」はいずれも実在する作者の名前が使われており、骨董知識としても正しい文言なのである。<br>
<br>
2007年12月19日 第12回「浜松町かもめ亭」での録音。
https://content-public.rakugo.ch/images/episode/spot_image/000/000/000/632/632_episode.main_image_large.jpg
https://rakugo.ch/play/632
2019-06-05T12:00:00+09:00